神戸大学の感染症のプロ、岩田先生(岩田健太郎医師)のダイヤモンドプリンセス号の船内はCOVID-19製造機と、そのカオスな状況を告発したYoutube動画が削除されて、再度話題です。
19日深夜に、厚生労働省技術参与の高山先生(高山義浩医師)がご自身のfacebookに投稿された反論ともいえる説明の影響か?と推測されていますが、たった1日で動画を削除したことでかえって混乱を招いたなどと逆に批判の声も集まっています。
話が込み入ってきているようなので、経緯をまとめました。
岩田先生とは、どんな医師なのか? ミヤネ屋で好評だったのはなぜ?については、こちらにまとめています。
岩田健太郎医師がダイヤモンドプリンセス号の船内はカオス、ぐっちゃぐちゃと告発した動画を1日で削除
削除された動画の中で、大事だなと思ったのは次の4つのポイントでした。
- ダイヤモンドプリンセス号に入って、感染症のプロの自分が、20年以上の経験の中で初めて「心の底から怖い」と思った
- ダイヤモンドプリンセス号内はレッドゾーン(防護服をつける)とグリーンゾーン(つけなくていい)の分けがぐちゃぐちゃ
- ダイヤモンドプリンセス号には”常駐している”感染症のプロがいない
- ダイヤモンドプリンセス号内の対応について「プロ」が進言しようとしても厚労省のトップが聞く耳を持たない
動画のポイントの詳細は、こちらにまとめていますので、詳しく知りたい方は合わせてどうぞ。
動画は削除しました。ご迷惑をおかけした方には心よりお詫び申し上げます。
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 19, 2020
削除の理由が、えらいシンプルですが、高山先生の指摘がそれだけ的を射ていた、ってことなんでしょうか。次で詳しく見ていきます。
厚生労働省技術参与の高山先生(高山義浩医師)の反論で岩田先生も納得で手打ち?!
厚生労働省技術参与の高山先生(高山義浩医師)のfacebookの投稿はかなりの長文ですが、一つ一つ具体的に指摘や訂正されていて、これもすごくわかりやすいのですよね。
厚生労働省技術参与という立場で、おそらくこのコロナ対策にはかなり早い時期から関わっている立場から、船内に数時間しかいなかった岩田先生には見えなかったであろう点を補足されていて、素人でも理解できます。
原文を読みたい方は、こちらをどうぞ。
- ダイヤモンドプリンセス号に入って、感染症のプロの自分が、20年以上の経験の中で初めて「心の底から怖い」と思った
>アフリカに居ても中国に居ても怖くなかったわけですが、ダイアモンドプリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。
これは岩田先生の感受性の問題ですから、否定するつもりはありません。また、船という特殊な閉鎖空間において、新興感染症が発生しているわけですから、怖くないはずがありません。ただ、そのなかで継続して頑張っている人たちがいることは、ぜひ理解してほしいと思います。ちなみに、私は明日も船に入ります。
課題は多々ありながら、これまで少しずつ改善させてきました。まだまだ改善の余地はあります。ただ、乗客がいる以上は逃げ出すわけにはいかないのです。少なくとも全てのオペレーションが終わるまでは、乗客を下船させて地域に、世界に放つわけにはいきませんでした。
最優先事項は身を守ることだと感染症医の端くれとして私も思いますが、2週間にわたり船のなかで頑張っている人たちは、乗客を支えながら日本と世界を守ることを最優先としているのです。
そういう事態になってしまったことについて、政府を批判することは構いませんが、解決を与えないまま現場を恐怖で委縮させるのは避けてほしかったと思います。逃げ出せない以上は・・・。
「少なくとも全てのオペレーションが終わるまでは、乗客を下船させて地域に、世界に放つわけにはいきませんでした。」
この一文に、船内で対応に当たっている方々の苦労がにじみ出ているように感じました。
やっぱり地域、国、世界へ放つことは絶対に避けなければいけない、船内でなんとかしなければいけない、という決意みたいなのを読み取ったのは私だけでしょうか?
ダイヤモンドプリンセス号内はレッドゾーン(防護服をつける)とグリーンゾーン(つけなくていい)の分けがぐちゃぐちゃ
>ダイヤモンド・プリンセスの中はグリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別かつかない。
感染症医として「グチャグチャ」と表現されるのは、分からないこともありません。でも、この表現はゾーニングがまったく行われていないかのような誤解を与えます。しかしながら、実際はゾーニングはしっかり行われています。完全ではないにせよ・・・。
たしかに、先進国の病院であれば、あるいは途上国でセットされるNGOや国際機関による医療センターであれば、もっと洗練された感染対策が実施されるでしょう。でも、いきなり、約3700人の乗員・乗客(しかも高齢者が多い)において新興感染症が発生した船舶・・・ というミッションは極めて複雑なのです。
私は海外でのNGO活動に関わったことがありますし、現在も国際NGOの理事を務めていますが、どんなNGOであっても、あるいは国際機関であっても、これが混乱状態から始まることは避けられないでしょう。この2週間が反省すべきところがなかったとは言いませんが、ここまで現場はよく頑張ってくれたなと私は思います。精神論と嘲笑されるでしょうが・・・。
ゾーニングについては、できている・いないの捉え方が立場によって違っていたように思えます。
岩田先生の主張 → 理想的ではないが、一定のゾーニングはできていた
この手前(写真撮ってるとこ)が清潔不潔が完全にクロスするゾーンになる、ということがおわかりいただけますでしょうか。 https://t.co/ICBy9nBBYx
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 20, 2020
あ、削除された。橋本さんにもゾーニングの問題を共有していただけて嬉しいです。 pic.twitter.com/TObeXEXvC6
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 20, 2020
- ダイヤモンドプリンセス号には”常駐している”感染症のプロがいない
>でも僕がいなかったら、いなくなったら今度、感染対策するプロが一人もいなくなっちゃいますよ
これは間違いです。毎日、感染症や公衆衛生を専門とする医師が乗船して指導しています。ご存じなかったんだと思います。まあ、ご自身に比べればプロのうちに入らないと言われると、返す言葉もありませんが・・・
高山先生も、船には何度も入っていらっしゃるそうですが、「常駐」じゃないんですね。
岩田先生が「常駐しているプロがいない」と言っていた「常駐」の重要性が、ちょっとよくわからないのですが、やはりいつでも相談に乗ってくれたり、アドバイスを仰げるプロが「常駐していない」と判断に困るので、アドホックな対応になってしまうというリスクを指摘したかったのかなぁと思います。
- ダイヤモンドプリンセス号内の対応について「プロ」が進言しようとしても厚労省のトップが聞く耳を持たない
>話しましたけど、ものすごく嫌な顔されて聞く耳持つ気ないと。
感染症医はコンサルタントとしての能力が求められます。それは聞いてもらう能力でもあります。私は聞いてもらえなかったとき、相手がダメだとは思いません。自分の説明の仕方が悪かったと思います。
考え方の違い、今まで付き合ってきた人々や環境の違いでしょうか。間違ってないと思うけど、そうじゃないんだよな、的なニュアンスがにじんでいますね。
岩田先生も、自分の動画が世間に与えた影響があまりに大きかったことや、指摘を受けて冷静になって、自分の言葉遣いや動画の雰囲気などが扇情的だったと思ったのでしょうか。
あっさり動画を削除して、理由も短いものでした。
高山先生がFBから情報公開しています。彼と公の場で議論するのはよくないし目標でもないので細かいことへの反論はしません。ただ大きな誤解あるといけないので一点だけ。
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 20, 2020
高山先生は「実際はゾーニングはしっかり行われています。完全ではないにせよ」とお書きになっていますができてなかったのは事実でよって感染の危険を強く感じました。派遣前「クルーズ船の中の本部を外に出すようぜひ進言してほしい。私も何度も主張しているのですが」とおっしゃったのが高山先生です
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) February 20, 2020
船内に入るために助力を受けた高山先生に迷惑をかけた、これ以上かけたくない、という気持ちが一番大きかったのかもしれないですね。
まとめ
岩田先生と高山先生はかなり親交が深い印象を受けます。
そんな二人が公の場で議論するのはナンセンスだ、ということで岩田先生は引いたように見えますが、世間ではみなさんいろいろな解釈をされていますね。
問題提起があって、その結果として現場が改善されたのなら、それは意味のあったことではないかと思います。
それよりも、下船者が自由にしすぎていることや、クルーズ船から死者が出ちゃったことの方が気になりますね。
お寿司屋さん直行とかは控えていただきたいです・・
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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